映画の『ハリー・ポッター』シリーズは、全て原作の小説に基づいています。
映画のタイトルもほぼ原作のタイトルに準じています。
どのタイトルもハリー・ポッターと「****」となっています。
この****の部分は、小説や映画のメインテーマや、重要な事柄を指す言葉が来ます。
しかし、第6作目の小説の映画版『ハリー・ポッターと謎のプリンス』のタイトルが、良く分からないという声を良く聞きます。
「謎のプリンス」とはどういう意味なのか?
「謎のプリンス」は一体誰なのか?
『ハリー・ポッターと謎のプリンス』の原題や由来は何のか?
これらの点について紹介します。
『ハリー・ポッターと謎のプリンス』の原題は?
「ハリー・ポッター」シリーズの第1作から第7作のタイトルは、全て日本語の小説と映画で同じです。
これらのタイトルのうち、1つを除く全てが、英語の原題の直訳です。
その1つが、『ハリー・ポッターと謎のプリンス』です。
「賢者の石」、「秘密の部屋」、「アズカバンの囚人」、「炎のゴブレット」、「不死鳥の騎士団」、「死の秘宝」は、忠実な翻訳です。
しかし、6作目だけ違っていて、原題は”Harry Potter and the Half-Blood Prince”です。
日本語タイトルの「謎のプリンス」のところが”Half-Blood Prince”と、大きく違っています。
タイトルの「謎のプリンス」の意味は?
日本語タイトルの「謎のプリンス」のところは、原題では”Half-Blood Prince”です。
「謎のプリンス」は”Half-Blood Prince”の訳語ではありませんが、”Half-Blood Prince”が意味する内容を指します
では、”Half-Blood Prince”は何を指すのかというと、本文中で登場し、本文中では、きちんとした訳語があてられています。
それは、「半純血のプリンス」です。
このため、タイトルの中の「謎のプリンス」は、本文中の「半純血のプリンス」のことを意味します。
このような原題の直訳でないタイトルや、タイトルの文言と本文中の用語の不一致が「謎のプリンス」の意味を分かりにくくしています。
タイトルに本文中の訳語をそのまま使ったとすると『ハリー・ポッターと半純血のプリンス』となり、6作目は、「半純血のプリンス」がテーマになっているのです。
謎のプリンスの由来は?
ハリー・ポッターのシリーズのタイトルは、いずれも「ハリー・ポッターの」次に、その作品での最も重要な話題が来ます。
6作目は、「半純血のプリンス」が重要な人物になっています。
これが、タイトル『ハリー・ポッターと謎のプリンス』の由来です。
6作目では、「半純血のプリンス」なる人物が話題になり、その人が何者なのかという謎は物語の最後でようやく明らかになります。
「半純血のプリンス」とは誰のこと?
プリンスは、ご存知のように日本語では「王子」ですね。
誰もが、プリンス=王子と考えていますから、「半純血」の「王子」を想像しますが、魔法界には「王子」は存在しません。
半純血の王子の正体は、最後になってようやく「プリンス」が「王子」でなく姓、苗字であること、「半純血のプリンス」がスネイプ先生であることが明らかになります。
スネイプ先生は、ホグワーツでの学生時代に、「半純血のプリンス」と自ら名乗っていたのです。
スネイプ先生が「プリンス」という姓を使った理由は、スネイプ先生の母親の旧姓が「プリンス」で、スネイプ先生の父親がマグルのため、父親の家系の姓「スネイプ」よりも魔女であった母親の旧姓を使ったためです。
「プリンス」という姓は、現実の世界で、英語圏で使われています。
「半純血」と使っているのは、スネイプ先生の父親がマグルで、スネイプ先生自身が、他ならぬ純血ではないマグルと魔法使いの子であったことを自虐的に表現するためです。
映画では、ホグワーツを襲撃したデスイーターたちと逃亡するスネイプ先生とハリーが対峙したときに、スネイプ先生自ら「我輩が半純血のプリンスだ」と言うシーンがあります。
英語の原題通りであれば、タイトルにある”Half-Blood Prince”なる正体不明の存在が、物語の最後まで引きずられ、スネイプ先生がダンブルドア校長を裏切り、そのスネイプ先生こそが「半純血のプリンス」だったという、良くできた作りになっています。
日本語のタイトルの「謎のプリンス」は、謎めいていて面白いのですが、タイトルと内容と正体の繋がりが良く分からなくなってしまいました。
日本語のタイトルですと、スネイプ先生が「我輩が半純血のプリンスだ」といったところで、「スネイプ先生」=「半純血のプリンス」が「謎のプリンス」に結びつきません。
このため、タイトルの「謎のプリンス」の正体が良く分からないままになってしまいがちなのですね。
原題”Half-Blood Prince”の意味は?
タイトルでは使われないものの”half blood”の訳語は物語の中身では「半純血」と訳されています。
この「半純血」なる言葉は、日本語にはなく、出版社と翻訳者の造語です。
“half blood”、「半純血」は、物語の中では、魔法族とマグルの親を持つ人を指す言葉ですが、私たちの現実の世界では、”half blood”は、「混血」と訳されます。
ですから、”half-blood prince”、はそのまま訳せば、「混血のプリンス」となります。
このようにして、タイトルでも物語の中でも「混血のプリンス」で統一すれば、疑問は生まれず、とても分かりやすかったはずです。
実は、「謎のプリンス」の邦訳の際に、一旦、直訳の『ハリー・ポッターと混血のプリンス』と決定したのです。
しかし、タイトルは、その後、「謎のプリンス」に改められました。
理由は、「混血」は、一昔前までは差別用語と認識されることがあったからのようです。
今の時代、ほとんどの人は「混血」を差別用語と考えていないようですが、かと言って現代で使うことも少なく、加えて、『ハリー・ポッター』シリーズはもともと児童文学ですから、「混血」との語が多くの人の目に触れるのを避けたかったのだと思われます。
そこで、物語の中では、「混血」を避けるために「半純血」という造語を使うことになりました。
タイトルは多くの人の目に触れるので、さらに「純血」を使うのも避けて「半純血のプリンス」とせずに「謎のプリンス」となりました。
まとめ
・『ハリー・ポッターと謎のプリンス』の原題は、”Harry Potter and the Half-Blood Prince”です。
・映画のタイトルの中の「謎のプリンス」の意味は本文中の「半純血のプリンス」です。
・「半純血のプリンス」は、スネイプ先生の学生時代の自称で、プリンスは、スネイプ先生の母親の旧姓です。
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